僕が僕だった日

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「欲しいときは遠慮なく言えよ!!」 ……いや、いらないよ。 そんな使いかけのもの。 僕はポケットティッシュで手を拭い、それでも不快感の残る手を振り回しながら歩いた。 隣にはサングラスとマスク姿の岩ちゃん。 ……終わりよければすべてよし……か。 イライラしたり悲しんだりしていても、仕方ないよね。 「岩ちゃん、今日は色々ありがと」 よく考えてみると、岩ちゃんが迎えに来てくれなければ、今この瞬間はなかった。 「……これからも協力すっからさ。だから、真里のこと、頑張れよ」 「うっ……うん」 クソー。 悔しいけど嬉しい。 いつもはちゃめちゃな岩ちゃんだけど、僕を泣かせるツボをきっちりおさえているよ。 僕は少しだけ泣いた。 今日だけ。 今日だけは、 真里ちゃんを呼び捨てにしていたこと 許してあげる。 .
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