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「太郎、顔をあげて」
うなだれる僕の肩に、おばあちゃんが手を乗せた。
「太郎の言う通り、汚い服だねえ」
「うん。あんなに綺麗なピンクだったのにね」
「派手な服だったけど、おじいさんに、よく似合っていたねえ」
ポロシャツの色は褪せてしまった。
だけど、おじいちゃんに対するおばあちゃんの想いは、一生色褪せることはないんだと思うと、心の底から叫びたくなった。
僕はおじいちゃんとおばあちゃんの孫に生まれて、本当に幸せだ……と。
うう。
目から汗が出ちゃいそうだ。これは涙じゃない。汗だ。
目頭がじんわりと熱くなる僕の横で、おばあちゃんがしれっと言った。
「ま、こんな汚い服はもういらないから、ごみ箱に捨ててくわね」
「へ??」
今の振り、一体何だったの?
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