決戦は土曜日

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「おはよう」 キッチンに立つ母さんに朝の挨拶を済まし、僕はイスに座った。 「おはよう、太郎。早いのね」 ダイニングテーブルには朝から豪華すぎる朝食が、これでもかと並んでいる。 「今日は一(ハジメ)さんが朝から仕事だから、たくさん作っちゃった」 母さんはうふっ、と可愛らしく笑うと、父さん用のコーヒーと僕用のオレンジジュースの用意をはじめる。 あ。 ちなみに、一さんとは父さんのことだ。 母さんは父さんを名前で呼ぶ。 僕が生まれる前からずっとそう呼んでいると、以前聞いたことがある。 「父さん今日は朝からなんだ。でもまだ起きてないの?」 「外でラジオ体操やってるみたいよ」 ……ラジオ体操。 父さんの毎日の日課だ。 しかもラジオ体操第1じゃなく、第2をやっている。 ラジオ体操第1しか知らない僕にとって、それは未知の動きである。 「そろそろ戻ってくると思うわよ。先に食べてて」 「うん」 せっかくの手作り焼きたてパンが冷めてしまう。 僕は母さんがホームベーカリーを駆使して作ってくれた、マヨネーズたっぷりのコーンパンに手を伸ばした。 その時 「おいコラ!!それは俺んだ。食うんじゃねええ」 横から罵声が飛んできた。 .
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