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部屋に戻った僕は、悩みに悩んで今日着て行く洋服を決めた。
ファッション雑誌に載っていたオシャレなイケメンの服装を、そのまま真似た。
だから完璧……なはずなのに。
何かが違う。
鏡に映る僕は、雑誌の中で爽やかに微笑むイケメンと程遠い。
……やっぱり、顔のせいかな。
雑誌のイケメンは顔に肉なんかついてないし。
人間は中身じゃない。
頭ではわかっているはずなのに、やっぱり顔に自信がもてないと心が弱くなる。
……あの飴、また欲しいなあ。
ダメダメ!!
僕は邪念を振り払うように激しく首を振った。
もうあんなものに頼っちゃいけない。
僕は僕らしくいればいいんだ。
このままの僕を、真里ちゃんにもっともっと知ってもらいたい。
それで、いつか真里ちゃんと付き合えたらいいな……なんて。
ひとりで幸せな妄想をしていると、家を出る時間が近づいていた。
「おばあちゃん、いってくるね」
ちゃぶ台に向かって声をかけた。
そこにおばあちゃんはいないけれど、「いってらっしゃい」という声が聞こえた気がした。
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