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待ち合わせ場所に着いたのは、約束より1時間も前だった。
5分前行動を心がけている僕だけど、いくらなんでも早すぎだ。
……どうしよう。
かといってやることもない。
現地集合!!と岩ちゃんが勝手に決めたせいで、遊園地の前でぽつんと佇んでいる。
あと55分かあ。
何もしていなくても時間は過ぎていくもの。
どうせなら真里ちゃんの想像でもしていようと、僕は目を閉じて彼女の笑顔を浮かべる。
「太郎くん」
妄想の中の真里ちゃんが僕を呼ぶ。
ムフフ。ムフッ。ムフフ。
ひとりでニヤニヤしている僕は、完全に妄想変態ヤローだ。
「太郎くん、何笑ってるの?」
頭の中で真里ちゃんの声がした。
妙にリアルな声だ。
透き通っていて……そう、まるで小鳥のさえずりのように心地好い。
「太郎くん。太郎くんっ。ヨダレ出てるよ?」
脳内真里ちゃんは、本物のような声で話しかけてくれる。
なんて便利なんだ。
僕の脳。
「太郎くん。ヨダレ拭くよ?」
唇に、優しく何かが当てられた。
「へ!?」
慌てて目を開く。
「まままっ真里ちゃむ!!」
目の前には真里ちゃんがいた。
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