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白い歯を輝かせ、岩ちゃんは爽やかに笑う。
「待たせたな!!」
……待ってない。
いや、違う。
待ってる。たしかに待ってはいるんだけど、今は間違いなく邪魔者だ。
「待ち合わせまでずいぶん時間があるけど、どうしたんですか?」
真里ちゃん、なぜか敬語。しかも言葉にトゲがあるよ。
自転車盗難事件以来、埋められない溝ができてしまったらしい。
「いやー、楽しみでね。ワクワクしてたら足がここに向いちまったんだよなー」
か……可愛い。
顔に似合わず可愛いことを言う岩ちゃん。
「意外」
これには真里ちゃんも絶句。
岩ちゃんは、自分の釣り上げた魚の魚拓プリントのタンクトップから太い腕と果てしなく長い脇毛を風になびかせながら、照れたように頭をかいた。
もう。
どこからツッコミをいれればいいのかわからなかった。
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