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「ふふ。太郎くん、何かいいことあった?」
真里ちゃんが僕のガッツポーズを見て、小さく笑う。
「あわわわ。これはね、太陽が楽しそうだから。つい……」
顔が赤くなる。
変なところを見られてしまって、恥ずかしくなる。
どうせ見られるのなら大きくガッツポーズをすれば良かった。
うん。
どっちも恥ずかしい。
「でもわかるよ。ふたり、すっごくお似合いだもんね」
真里ちゃんが小声で囁く。
「真理ちゃんもそう思う?実はね、ふたりがうまくいってくれたらいいな、なんて思ってるんだ」
「それはあたしもちょっと期待してるかも。華ちゃんなら太陽くんにピッタリだもん」
「うん。そうだね。恋をするって素敵なことでしょ?僕は、太陽にも恋の素晴らしさを知ってもらいたいんだ」
「太陽くんは恋をしたことがないの?」
彼女は驚いたように目を見開いた。
「好きな人が出来てもどうせ結婚相手は決められちゃうからって、諦めてるんだ」
「……そうなんだ。何だか悲しいね」
「僕もそう思う」
諦めたらそこで試合は終了だって、誰かが言っていた。
家に帰るまでが遠足だ、とも言うし。
「僕は太陽が好きだから、幸せになって欲しいんだ」
「太郎くんは優しいね」
真理ちゃんは、パトラッシュとネロを迎えに来た天使のように柔らかく微笑んでくれた。
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