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「やややっ、優しくなんてないどすえ」
焦り過ぎて舞妓口調になってしまった。
真里ちゃんはもう慣れてしまったのか、笑っているだけだ。
恥ずかしくて顔を上げることが出来ずモジモジしていると、突然かたい壁にぶつかった。
痛い。鼻が潰れる。
というか、すでに潰れたかも。
顔を上げて驚いた。
僕がぶつかったのは壁じゃない。
壁のようにかたい筋肉の持ち主、岩ちゃんだ。
「何だよ、岩ちゃん。急に立ち止まってどうしたの!?」
鼻を押さえて岩ちゃんを見上げた。
「あそこ見てみろよ。やけに人だかりが出来てるぜ」
「あ。たしかに」
それだけじゃない。
テレビカメラや照明を持っている人もいる。
「あれ、何かの撮影じゃない?」
立ち止まった僕たちに追いついた華さんが言った。
……撮影?
嫌な予感がする。
近づいちゃいけない!と危険信号が点滅している。
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