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いつもそう。
僕が父さんの息子だって知ると、みんな寄ってたかって似てないと言う。
父さんは名脇役No.1といわれている有名な俳優で、もう何年も、年間で一番多く映画やドラマに出演している俳優として名高い。
母さんはそんな父さんと釣り合いがとれるくらい綺麗な人で、元女優だ。
そんなふたりの間に生まれた僕。
期待しちゃうよね。
しかし、生まれてビックリ、僕は死んだおばあちゃんに激似だった。
せめてもう少し両親の遺伝子が欲しかった。
「おい、太郎。いるんなら顔くらい見せろよな!!ガハハハ!!」
まるで海賊だ、と思った。父さんはいつだって豪快で、男らしい。
このまま海に出てお宝を探していても、おかしくない。
「今日は朝から撮影って聞いていたけど、まさかここで撮影だったなんて……」
ここに父さんがいると知っていたら、来なかったよ。
「こんなところで会えるなんて嬉しいなあ、息子よ」
いや。
嬉しくない。
「早く仕事に戻りなよ」
「えー、ヤダヤダー」
子供みたいに駄々をこねる中年男性。
スクリーンやテレビの中ではいつも輝いている父さんだけど、普段はいつもこんな調子で、僕より精神年齢が低い。
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