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ホッと安堵の溜息をついた僕の耳元で、
「次はこんなうまくいくと思うなよ、ブタ野郎」
と、華さんが女王様面で囁いた。
裏表ありすぎでしょー。
なにあの恐ろしい顔。
あれは悪魔に魂を売った人間の顔だよ。
「ごめんね、太郎くん」
何もなかったように笑顔で太陽の隣を歩く華さんを見つめる僕に、申し訳なさそうに目を伏せる真里ちゃん。
「えっ。真里ちゃん、何謝ってるの?」
「だって華ちゃんが太郎くんに意地悪してたから」
「あ……」
気づいてたのね。
「太郎くん、顔に出るタイプなんだもん」
指摘されると恥ずかしくなる。
僕が新撰組を知らないということが、彼女にバレていたなんて。
ああ。
穴があったら入りたい。
「それにしても華ちゃん、やり過ぎだよね。いい子なんだけどすっごいドSなんだよ」
……ドS?
うん。
たしかにドSだと思います。
「太郎くんみたいなドMな人をみると、いじめたくなるんだと思うの」
真里ちゃん、さりげなく僕のことドMって言ったよ。
たしかに僕はMだけど。
いや、正確にはドMだけど。
そんなにサラッと言われると、嫌な汗が噴き出しちゃうよ。
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