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「田中くんの前だとＭになっちゃうの」
鼻にかかったような甘ったるい声。
田中くんの相手は教師なの？
手の平が汗でびっしょり濡れている。
「今日も感じさせてやるよ。薫」
……薫。
薫。薫。薫。
……そうだ。思い出した。
どこかで聞いたことのある声だと思ったら、数学の笹山薫先生だ。
ばかばか。僕のばか。
どうしてもっと早く気がつかなかったんだ。
いつも以上にねっとりとした話し口調だったせいで、すぐに笹山先生だとわからなかった。
僕たちに数学を教えている笹山先生は、好んでパステルカラーの洋服を着ていることからパス山というあだ名で呼ばれている。
豊満な胸と突き出たお尻。体のラインをいつも強調していて、男子生徒からはとても人気があるけど、女子生徒からはかなり嫌われている。
僕は笹山先生みたいなタイプの人間に魅力を感じないけど、岩ちゃんはいつも『あんな女とやりたい』と漏らしている。
その、笹山先生が。
田中くんとアブナイ関係だったなんて。
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