秘密は誰にも知られちゃいけないんだ

10/14
前へ
/314ページ
次へ
動悸がする。 ついでに、息切れも。 誰か僕に救心(薬)をください。 完全に挙動不審になり目を泳がせていると、ヤンキーのリーダーが言った。 「ナイスファイト!!」 びしっと親指を立てている。 その親指のあまりの短さに驚いた。 指を詰めた……なんてわけではなく、最初から短いのだ。 それにしても 何に対してファイトなんだ!? 僕がトイレから生還したことなのか。 読めない。 彼らの思考回路がまったくもってわからない。 続けざまに残りのふたりのヤンキーも「ナイスファイト」と親指を立てる。 なんだか今にも泣きだしそうな顔をしている。 僕は戦場から生きて返ってきた兵隊の気分だった。 彼らは細い目をキラキラさせ、何かを待っている。 これは。 間違いなく、僕もやるべきだ。 彼らはそれを待っているんだ。 「ナ……ナイス、ファイト」 反り返るくらい親指を立て、彼らに向けてニッと笑って見せた。 ヤンキートリオは静かに頷き、満足したのかあっさりトイレの中に消えていく。 彼らは一体何者だ。 疑問だけが残った。 .
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10973人が本棚に入れています
本棚に追加