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足がもつれそうになる。
額にはうっすら汗が浮かび、手はぬるぬるするくらい濡れている。
それでも僕は胸に真里ちゃんのバッグをがっしり抱え込み、勢いよく階段をおりている。
真里ちゃんは追いかけてきているんだろうか。
後ろを振り返る勇気がない。
真里ちゃん、きっと怒っているだろうな。
4階から2階におりた踊り場で、僕の腕はぐいっと引っ張られた。
そのあまりの強さに、体がよろめく。
おっとっと。
バランスを崩して壁に激突したところで、僕の腕を掴んだ犯人と目が合った。
大きな目が僕を真っすぐ見つめている。
……真里ちゃん。
僕は彼女と向き合っていた。
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