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その時、頭の上から声がした。
「あれ?真里じゃん。何してんの?」と、聞き覚えのある声。
相手は見なくても誰かわかった。
さっきまで掃除用具入れの中にいた僕の耳は、いつも以上に敏感なんだ。
「……田中くん」
彼を見上げながら真里ちゃんがつぶやいた。
大好きなひとが目の前に現れたというのに彼女の表情は沈んだままで、
濁ったような暗い瞳を田中くんの横に立つ笹山先生に向けている。
田中くんと笹山先生。
そして、真里ちゃん。
完全なるトライアングル。
三角関係の完成だ。
え?僕?
完全にいらない存在だ。
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