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田中くんは僕を一瞥すると「彼は、誰?」と真里ちゃんに聞いた。
彼女はちらりと僕を見たあと「……友達」と嘘をついた。
……感無量。
僕はただの引ったくり犯で、真里ちゃんの鞄を無理矢理奪い取った悪い奴なのに。
彼女はそれを田中くんに隠し、なおかつ“友達”と言った。
僕はもう、死んでもいいです。
例え嘘であっても真里ちゃんに友達と言われる日がくるなんて、夢にも思っていなかった。
「へぇ。友達ねぇ」
疑うように目を細める田中くん。
自分は浮気をしているくせに、何だ、その態度は。
メラメラと僕の怒りのボルテージが上昇する。
おまえなんて階段から落ちちゃえ。チクショー!!
心の中で叫び続ける。
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