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なんとなく気まずい空気が流れていた。
田中くんと真里ちゃんは恋人同士だというのに、どこかぎこちなくて、不自然だ。
「俺を待ってたんだろ?早く帰ろうぜ」
田中くんはそう言うと階段を降りてきた。
その時だ。
田中くんの足元に、一瞬バナナの皮が見えた。
いや。
そんなもの絶対有るはずないのだけど、黄色い皮が、たしかにあったんだ。
見間違えなんかじゃない。
田中くんはそれに気づかず、皮を踏む。
つるん。
という音が聞こえてきてもおかしくないくらい綺麗に、田中くんが滑った。
まるで安いコント番組を観ているような気分だ。
「うわっ」という田中くんの声と同時に、
彼が、降ってきた。
僕の、上に。
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