僕が犯罪者になった日

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……頭が痛い。 ズキズキを通り越して、ズッキンズッキンしている。 目を開けると、見慣れない天井があった。 ここはどこだろう。 僕はたしか階段から落ちてきた田中くんの下敷きになって、倒れたんだ。 そこまでは覚えている。 だけどそのあとの記憶が綺麗さっぱりない。 うっすらまぶたを開け、周りを見渡してみる。 「うへっ」 変な声が出た。 もちろん、僕が発した声だ。 だだだって、僕の隣に、真里ちゃんがいたんだ。 しかも、椅子に座ったまま僕の眠るベッドに顔を伏せ(正確には顔を横に向け)、小さく寝息をたてている。 どうして真里ちゃんがいるんだ!? 見たところ、ここは学校の保健室のようだ。 保健の先生は現在不在。 倒れた僕をきっと誰かが運んでくれたんだ。 静かな部屋に、すーすーと一定の寝息が響いている。 ちょっと。ちょっとだけ。 僕はこっそり彼女の顔を覗いてみた。 すべすべの頬。 長い睫毛。 それから 柔らかそうな唇。 ごくり、と喉が鳴った。 さ……触りたい。 いや、ダメだ。 引ったくりの次は変態行為か。 僕は勝手に動き出してしまいそうな右手を必死に抑え、大きく息を吸ってはいた。 .
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