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春の陽は冬に比べて長い。
夕方を過ぎたというのに、あたりはまだ明るい。
校門を出たところでいったん足を止め、振り返った。
真里ちゃんを保健室に残したまま、僕はこっそり逃げてきた。
もちろん帰る前に職員室に寄り、保健室に女の子がいることを告げてきた。
これで誰かが彼女を起こしてくれるだろう。
僕が目を覚ますまで、真里ちゃんは待っていてくれたのだと思う。
そんな優しい彼女を置いてきてしまったことに罪悪感を感じているのだけど、
本当の僕の姿を彼女に見られるのが怖かった。
とぼとぼと歩きだした僕のあとを、太っちょな影が追いかけてくる。
僕は、やっぱりただのデブだ。
家までの道を半分ほど歩いたところで気がついた。
真里ちゃんは一体いつ寝たんだろう。
僕が本物の僕に戻る前に眠ってくれていればいいのだけれど。
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