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チッ、と大きな舌打ちが聞こえた。
「え?今のおばあちゃん?」
この部屋には僕とおばあちゃんしかいない。
舌打ちをしたのは僕ではない。
ということは、どう考えてもおばあちゃんだ。
だけどおばあちゃんは素知らぬ顔で「わたしじゃないねぇ」なんて言う。
女のひとって怖い。
そんな僕を無視して、おばあちゃんは続ける。
「田中が足を滑らせたとき、太郎は奴の足元を見たのかい?」
「足元?」
あの場面を思い出す。
田中くんは間違いなく、
バナナの皮を踏んだ。
あるはずのない、バナナの皮……。
まさか!?
「あれ、おばあちゃんの仕業なの!?」
あの時バナナの皮を置き、意図的に田中くんを滑らせた張本人は、おばあちゃんだったのだ。
「やっと気づいたのかい。鈍感な子だねぇ」
ひっひっひ、と引き笑いをしながら、おばあちゃんは楽しそうに笑った。
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