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とりあえず荷物おいてきなさい、と母さんに言われ僕は自室に向かう。確か僕の部屋は二階だったかな??どうだったかな??
「あんたの部屋なら二階にあがって左に曲がった突き当たりの部屋よ」
僕が考えていると、それを察したのか母さんが声をかけてきた。
「あぁ・・・ありがとう」
「本当に物覚えが悪いんだから、昔から」
「ははは、そうだっけ」
「それさえも覚えてる訳ないわよね・・・あんたが」
「・・・」
「早く荷物おいてきなさい、お葬式の準備って色々大変なの、早く手伝ってちょうだい」
「うん」
母さんは逃げるように台所に入っていった。これは例えではなく、本当に僕から逃げたのだと思う。ひどい親だ。本当に僕から逃げたいのは僕なのに。
とにかく、部屋に荷物を置こうと二階にあがる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・右の突き当たりだっけ??
僕は右に進みドアを開けた。
「あ、」
「あ、」
そこは僕の部屋ではなく妹の部屋だった。妹(だと思う、多分)は黒いセーラー服に身を包み、そこに立っていた。目の回りが赤くなっている。泣いていたのだろうか。
「兄貴、帰ってたんだ。あ、あたしの名前わかる??」
「・・・わかると思ってるなら俺を過信しすぎたよ」
「だよね。あたしは七視(ななみ)、梨本七視だよ兄貴」
「ん、ただいま七視」
「・・・兄貴、ちゃんと帰ってきたんだね」
「父さんの葬式だからな」
「父さんのことなにも覚えてないくせに」
「・・・」
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