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【6月7日(月)午後7時5分】
七海は一日の仕事を終え、帰宅することにする。
玄関に入り、鍵とチェーンを掛け、雑に靴を脱ぎ捨て、立ちぱなしで浮腫んだふくらはぎを摩ったり、揉んだりして刺激を与えた。
貰ったプレゼントをリビングの机の上に置き、包装を丁寧に破って中身を取り出す。
中身は表紙が赤いスケジュール帳だ。
「みんなありがとう……赤い箱は何が入ってたんだろ」
そう言いながら、スケジュール帳をぺらぺらと巡った。
カレンダー、6月のところで巡る手を止めると、日付欄に記号が書かれている。
明日、6月8日(火)は●。
些かの疑問は持ったがあまり気にせず、一日着た服を脱ぎ捨て、バスタオルを体に巻いて浴室へ向かう。
汗を流す程度にシャワーを浴び、髪を洗い早々と風呂から上がった。
バスタオルで頭を拭きながら、ふと玄関先に視線を移すと、郵便受けに挟まれている真っ赤な封筒に気づく。
封筒に宛名はない。差出人の名前もない。七海は首を傾げ、封を切り中身を取り出した。
【いつも一緒。摸写】
人間味、暖かさが感じられないパソコンで書かれた文字、隷書体だ。
表情を曇らせ辺りを見回して、ドアから一歩遠ざかった。手紙を破り、小さく丸めてごみ箱へ投げ捨てた。
『本日未明、高校生らしき若い男女の変死体が海から引き上げられ、当局では自殺の可能性として捜査を……身元断定できるものは所持しておらず、手掛かりは携帯──』とテレビから音声が漏れた。
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