僕は田中くん。

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僕は気付いた時には既に彼女と居た。 6帖程度のこの部屋で僕と彼女は生活をしていた。 今も当たり前のように同じ布団で寝ている。 隣で寝る彼女の寝息がどこか寝心地がいいと思った。 そんな僕には記憶がない。 記憶がないどころの話じゃなく、無知すぎる。何にも知らなくて全部が新鮮。 何を忘れているのかもわからない。 本当に、気付いたら彼女と居たのだ。 ただ、"家族"のような感情ではなく僕は彼女に"恋"をしているのは何となくわかる。 いつか彼女に僕が何を忘れているかを聞きたいんだけど、聞けない理由がある。 僕は喋れない。 口があるのに、喋れない。 聴覚は機能している。 なのに、喋れない。 「あ」と発しても、耳に響くソレは「あ」じゃないんだ。
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