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コツコツコツ。 やたらと響く足音を聞きながら、私は1階を歩く。 前を歩く兄貴は、足を止めて振り返った。 「ここ、やっぱりおかしいね」 聞き逃してしまいそうだが、やっぱり、と兄貴は言う。 「什器のパイプ……何本か抜けてるよね?」 にこやかに微笑みながら、兄貴は什器を指さしていた。 「兄貴……ひょっとして知ってるの?」 「最近流行してる殺人事件の事?肝試しに行った人間が行方不明になって、死体で発見されるってヤツだろう?」 にっこりと微笑みを浮かべる兄貴の目は、ちょっぴり痺れる程冷たい。 「ここ……なの?」 ごくりと唾を飲み込みながら、私は問いかける。 「他にも候補地が挙がってたよ」 優しい口調とは裏腹に、兄貴はひたりと前を見据えていた。 「それに、黒羊が一緒にいるんだ。過程を楽しんだりしていなければ、何らかのアクションを起こすだろう」 信頼とも取れる言葉を聞いて、私は内心溜め息を吐く。 兄貴の言葉を疑う訳ではないが、羊の悪い癖は健在だ。 前にも何人もを見殺しにして、自分の楽しみを優先している。 今回の事も、犯行現場や犯人の人物像を、予め想定していたのではないだろうか。 あれがくたばるかも知れないと言う事態に踊らされて、喜び勇んだ自分自身が恨めしい。 人間相手に後れを取るようなヤツじゃなかった。 「こっちも武器を探そうか?僕らは戦闘向きじゃないからね」 微笑む兄貴に対して失礼だとは思ったが、兄貴は笑いながら犯人をボコボコにするタイプだよね、と私は迷わず思ってしまう。 本当に、悪いとは思うんだけど、ね。
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