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「携帯電話のアンテナです」
さらりとそう言って、槌谷は携帯電話の画面を僕達に向けた。
「圏外なのが……気になる事なのかい?」
僕に問われて、槌谷はにこりと笑う。
「先に下りた時には、日向君と連絡が取れました。ですが今は、メールすら送れない」
丁寧なその説明で、僕は気付いてしまった。
「作為的な電波障害?」
僕の言葉を肯定するように、槌谷はこくりと頷いた。
「しかも、単独犯にしては動きが早過ぎますね……最悪、複数犯の可能性も否めない状況です」
「どうして、もっと早く……」
泣いていた玉山が、槌谷を睨み付けながら呟く。
「止めましたよ?私は」
強い口調ではなかったが、槌谷の言い分は正しかった。
「最近のニュースを知っていて、なぜ自分は無事でいられると思うのでしょう?危険は十分承知の上で来たのではありませんか?」
冷ややかなその言葉に、僕達はびくりと肩を震わせる。
まるで、これが予測出来たかのような厳しい声だ。
「そんな事!!誰が分かるって言うんだよ!!」
日向が叫ぶ。
そして玉山は、声を殺して泣いていた。
「自分で引き起こした事は、自分で責任を取る物です。次に扉が開いたら、武器になる物を探しましょう。固まっていれば、何人かは生き残れるかも知れませんからね」
この期に及んでも槌谷は冷静で、ある意味正しい。
「君は……生き残れると思っているのかい?」
どうしてそんな事を聞いてしまったのか、僕にも分からないけれど。
「さぁ?どうでしょうね」
くつりと笑い、槌谷はそう答えたのだった。
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