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時間だけが過ぎて行く。
泣いていた美香は、いつの間にか泣き止んでいた。
どれ位そうしていたのか、俺は美香の手を握ったままだった事に気付く。
「槌谷君……」
少々掠れていた物の、しっかりとした声で美香は槌谷を呼んだ。
「何でしょうか?」
声を掛けられたのが意外だったのか、槌谷は目をぱちぱちと瞬く。
「下の扉……本当に開くと思う?」
美香に問われて、槌谷はクスリと笑った。
「どうでしょうね」
からかうようなその声に、俺はカチンと来る。
「確かに絶対とは言えないが……可能性は高いだろうな」
槌谷の言葉を肯定するように、守本が続けた。
「何でだよ?ニュースじゃ全員が行方不明になったって話じゃなかったろ?」
何だか色々あり過ぎて、俺には言葉を考える余裕がない。
何でコイツ等は冷静でいられるんだ。
「ですから、残った人数分のパーツが重要何ですよ」
槌谷に言われて、俺は首を傾げる。
「今までの殺人を鑑みるに、シリアル・キラーは品定めをしてから被害者のみを狙い、その上でパーツを持ち去っています」
「で?」
一々講釈っぽい槌谷の説明を聞きながら、俺はひらひらと手を振った。
「我々を閉じ込めた理由がそのパーツにあるのならば、全員が獲物である可能性が高い……そう思ったまでです」
あっさりとそう言われて、俺は懐中電灯を取り落とした。
力が抜けて震え出した自分の手を見詰める。
落ちた懐中電灯を拾い上げて、美香は俺の手を握った。
さっきまで、俺がそうしていたように。
「勿論、この間に殺人の痕跡を消し、ここから死体を持ち去っていると言う可能性もありますよ?犯人も捕まりたくはないでしょうからね」
槌谷の言葉は、恐い。
どちらも俺達にとってはマイナス要素じゃないか。
俺達を襲うにしても、ここから逃げてるにしても、俺達が無事に戻れるとは限らない。
ここには水も食料もないのだ。
閉じ込められてしまったら、自力で脱出するのは無理何じゃ……。
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