BOX

19/28
前へ
/61ページ
次へ
時間だけが過ぎて行く。 泣いていた美香は、いつの間にか泣き止んでいた。 どれ位そうしていたのか、俺は美香の手を握ったままだった事に気付く。 「槌谷君……」 少々掠れていた物の、しっかりとした声で美香は槌谷を呼んだ。 「何でしょうか?」 声を掛けられたのが意外だったのか、槌谷は目をぱちぱちと瞬く。 「下の扉……本当に開くと思う?」 美香に問われて、槌谷はクスリと笑った。 「どうでしょうね」 からかうようなその声に、俺はカチンと来る。 「確かに絶対とは言えないが……可能性は高いだろうな」 槌谷の言葉を肯定するように、守本が続けた。 「何でだよ?ニュースじゃ全員が行方不明になったって話じゃなかったろ?」 何だか色々あり過ぎて、俺には言葉を考える余裕がない。 何でコイツ等は冷静でいられるんだ。 「ですから、残った人数分のパーツが重要何ですよ」 槌谷に言われて、俺は首を傾げる。 「今までの殺人を鑑みるに、シリアル・キラーは品定めをしてから被害者のみを狙い、その上でパーツを持ち去っています」 「で?」 一々講釈っぽい槌谷の説明を聞きながら、俺はひらひらと手を振った。 「我々を閉じ込めた理由がそのパーツにあるのならば、全員が獲物である可能性が高い……そう思ったまでです」 あっさりとそう言われて、俺は懐中電灯を取り落とした。 力が抜けて震え出した自分の手を見詰める。 落ちた懐中電灯を拾い上げて、美香は俺の手を握った。 さっきまで、俺がそうしていたように。 「勿論、この間に殺人の痕跡を消し、ここから死体を持ち去っていると言う可能性もありますよ?犯人も捕まりたくはないでしょうからね」 槌谷の言葉は、恐い。 どちらも俺達にとってはマイナス要素じゃないか。 俺達を襲うにしても、ここから逃げてるにしても、俺達が無事に戻れるとは限らない。 ここには水も食料もないのだ。 閉じ込められてしまったら、自力で脱出するのは無理何じゃ……。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加