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「……」
無言で俺を見詰める槌谷と、楽しそうな黒田と守本。
不安そうな顔をしている美香と、守本を睨み付けている梢。
「日向君」
槌谷の声に、俺の背筋はヒヤリとした。
にっこり。
槌谷は微笑んでいるのに、背筋が凍り付きそうな程寒い。
見れば黒田も笑みを引き吊らせていた。
「まさか、行くつもりではありませんよね?何があるのか分からないような場所に」
にっこりにこにこ。
柔らかな笑みを浮かべているだけに、槌谷から感じる威圧感は凄まじい物がある。
「あかんか?ちょっと見て、写真だけ撮って戻る言うんわ」
黒田の声に、槌谷は視線をパネルに向けた。
謎の威圧感から解放されて、俺はほっとする。
「行きたくないのですが?」
きっぱりと言い切られて、俺は黒田と守本を見詰めた。
行く気満々なのはこの2人だ。
「行くならさっさと行こうよ」
若干苛々とした口調で梢が言った。
「梢ちゃん……」
美香は眉根を寄せて、心配そうに梢を見上げている。
小柄な美香は昔から、恐がりと言うよりは心配性だ。
むしろ梢の方が恐がりなのに、気が強いせいか背伸びをしたがる傾向にある。
俺達3人は幼馴染みだ。
高校は別々だったし、学部も違うけど。
「健ちゃん……」
か細い美香の声と共に、シャツの裾がちょっとだけ引かれる。
「私も……行きたくない……」
美香に言われて、俺は梢と顔を見合わせた。
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