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結構な広さのある通路を通り、目的地まで急ぐ。
埃っぽいのは否めないが、ゴミはほとんど見あたらない。
「ここですね」
躊躇いもなくそう言うと、槌谷は扉を開いて中に入った。
「位置的には、この辺り……」
ずかずかと中に入り、守衛室の中を物色している槌谷を呆然と見守っていた俺と美香は、聞こえて来た舌打ちの音に目を瞬く。
「なくなっています」
懐中電灯が照らす先に、鍵はここにと書かれたホワイトボードがあった。
その下には鍵を掛ける為のフックがある。
「管理してる不動産屋が持ってるんじゃないの?」
美香に問われて、俺は槌谷に視線を向けた。
「表の扉は閉まっていましたか?ここが閉鎖されて何年になりますか?大きなゴミやガラスの破片を見ましたか?」
矢継ぎ早に質問で返されて、俺は目を丸くする。
この建物が閉鎖されたのは、30年程前だったはずだ。
表の扉の鍵は壊されていたが、中の什器はそのまま置きっぱなしだった。
割れた窓ガラスも、勿論そのまま……。
「槌谷……」
「管理している不動産屋がゴミ掃除をしたのなら、鍵は新しい物にするでしょう?」
槌谷にそう言われて、美香は息を呑んだ。
「梢達は?」
「健ちゃん!!トランシーバーを使って!!」
美香に急かされて、俺はトランシーバーを取り出した。
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