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階段を下りて行くと、目の前に非常口が見えて来る。
先頭を歩いていた黒田がドアを開け、中を懐中電灯で照らした。
積み上げられた段ボールや棚があり、奥には大きな食器棚のような物も見える。
「バックヤードかしら」
眺めていた田浦が呟き、僕達はそのまま中に入った。
壁伝いに進みながら奥へと向かう。
広い空間にそれぞれ囲いがあって、置かれている物も違っている。
田浦が言ったように、ここはバックヤードのようだ。
「あれ?こっち側は開かへんわ」
端まで行った所にある扉は、どうやら閉じているらしい。
黒田と田浦が、2人で押したり引いたりしている。
「写真だけ撮って戻ろう」
何もない場所だと分かった以上、長居するつもりはない。
適当にカメラを向けて、僕は写真を撮った。
「ねぇ、ちょっと……」
田浦の声に振り返れば、もう1つなくてはならないはずの、懐中電灯の光が見辺らない。
「黒田?」
キィ……と、何かが擦れるような音が聞こえて、僕はそちらに視線を向けた。
先程までは確かに閉じていたはずの扉が開いている。
ガ……ザザッ……。
トランシーバーから出た音がやけに大きく響いて、僕は田浦の手を取った。
どちらにしても、2人で入るのは危険な気がする。
『梢!!』
扉に近付くと、音がクリアになって行く。
どうやら日向のようだ。
『今すぐ戻って来い!!俺達以外に何かいる!!』
必死な様子のその声に、僕は振り返った。
「何かって……」
声を震わせる田浦を見て、僕は扉に手をかける。
「開かない」
僕の声に、田浦はトランシーバーを取り上げた。
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