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車の中で、はたと気付く。そういえば楓は新人警官の名前を知らない。
「俺より背が高く、色素が薄めな新人警官と言って通じるものか…?」
多分無理かもしれない。
取り敢えず、それは署に行ってから考えることにした。だがしかし、人はそれを行き当たりばったりという。
受付に近寄り、女性職員に一礼して声をかける。彼の整った顔立ちに、彼女らはしばしみとれているが、慌てて本業を思い出したのか、笑顔で対応する。
「どうかいたしましたか?」
「あの、実はお聞きしたいことが」
「あれ? 楓先生?」
受付の女性職員に言いかけた時、後ろから声をかけられ振り返ると、一人の女性警官が小首を傾げながら近寄って来る。
「…まさか、小林…まりえさん?」
楓の言葉に、彼女は満面の笑みで近寄ってくる。
「やだー、ウソー!! 本当に楓先生じゃない!! お久しぶりです!」
「久しぶりだね。まさか警官になっているなんて知らなかったよ」
知り合いと見られる二人の様子にすっかり置いていかれている二人の女性職員。まりえは嬉しそうに楓と話している。
「先生、何か用事ですか? 急ぎでなければ、少しお話しましょうよ」
(…まぁ、聞きたいこともあるし、あっちで得られる情報なら、こっちでも得られるか……)
一瞬で考えをまとめると、まりえに笑顔を向ける。
「そうだね。久しぶりだし、まりえさんに時間があるなら」
「ありがとう先生!」
楓は受付の女性職員に礼を言い、まりえについて歩いていく。残された二人は、奇妙な組み合わせにボーゼンとした視線を送る。
「…小林さんの恩師? それにしたらかなり若い気がするんだけど……」
「確かに…。同年代くらいにしか見えないわよねぇ?」
二人の疑問を解決する術は、既に立ち去っていた。
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