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「ただいまー、遅くなってごめんね」
近くのスーパーでバナナと小松菜を買い、それを引っ提げて玄関に入る。
彼の声を聞きつけたのか、奥の方から「パパー!!」といった叫び声が聞こえてくる。
その大音量に苦笑しながら居間に入った。
居間には巨大な鳥かごが3つ、中ぐらいが1つあり、これまた大型の鳥が4羽いる。
そして身体の大きさに見合う音量で思い思いの言葉を発していた。
楓はその内苦情が来てもおかしくないな、と軽く溜め息をついた。
「フランソワ、しーっ!」
中でも一番落ち着きの無いヨウムのフランソワに向かって、口元に人差し指をあてて言うと、彼は小声で「パパ、おかえり」と言った。
「ただいま、フランソワ」
檻越しに頭をくすぐってやった後、隣の檻でおもちゃにぶら下がっているコンゴウインコ(ハルクイン種)のアルカスに向かう。
「ただいま、アルカス」
アルカスはおもちゃから降りると、檻に頭を擦りつけ、撫でてくれと催促する。
もちろん楓は頭を撫でてやると、嫉妬深いフランソワが鳴き声を上げる。
「ダメー! パパ、フランソワの! ダメー!!」
「わかった、わかってるからほら、しーっ」
ようやく黙ったところで、また隣にある中ぐらいの檻に入っているウコッケイのハクタクに言う。
「ただいま、ハクタク」
ハクタクは頭を二回縦に振る。それに微笑み返すと、やはりフランソワがうるさいのでまた黙らせた後は、また隣の檻に入っているスミレコンゴウインコのヴィオラに声をかける。
「ただいま、ヴィオラ」
ヴィオラはゆっくり一回だけ頭を縦に振ると、撫でてくれと頭を伸ばす。
お約束の如く、フランソワがうるさいのでまた静かにさせ、これで一連の挨拶は終わりとなる。
諸事情で引き取ることになった彼らだが、実によく楓になついている。
ただ、夜明けと共に起き、同じ時間に楓を叩き起こすのが少々の悩みである。
彼らに昼寝の時間はあるが、楓には無いのだ。
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