奇妙な家族構成

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 彼らのいる部屋の灯りを消し、楓は居間に戻る。キッチンで適当に夕食を作り、熱い紅茶を入れた。  一息つき、ふと彼らのことを思う。  フランソワとは、共に生活を始めてから7年程経っている。あの子は「なつかない」という理由で飼い主から保健所へ預けられた。それを楓が引き取ってきたのが始まりで、アルカスもハクタクもヴィオラも、そうやって楓の家にやって来た。  皆、人間の身勝手で捨てられた。  保健所にはそういった動物が多い。  引き取り手が現れるなんて稀で、大体は処分されてしまう。  特にフランソワは荒れていて、人間を見ると威嚇はするし、近付こうものなら容赦無く攻撃された。  最初の2年は我慢との戦いだったとしか言えない。  しかしなついたら、楓にだけべったりで他者の介入を許さないという独占欲の強さに、以前とは別の理由で苦戦中である。 (…仲良くなってはくれないものか)  溜め息をつきつつ、そんなことを思う。  特にハクタクとの仲は険悪で、目が合った瞬間お互い攻撃しようとする。  2羽のケンカは日常茶飯事であるが、もう少し仲良くして欲しいと思うのは我が儘なんだろうか、楓はそんなことを考えたが。 (…ま、あの子らには無理だろうな……)  結果は自分が一番よく知っている。  アルカスとヴィオラがわりとおっとりした性格であることは幸いだった。むしろ、フランソワとハクタクが他人に対し険悪過ぎるというのもあるかもしれない。  自分を慕ってくれるのには、正に飼い主冥利に尽きると言える。  ただ、もう少し他人を許してくれないと、楓に何かあったときに世話をしてもらえないかもしれない。  それが今のところ、最大の心配である。
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