見張りは危険

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月明かりの中に浮かび上がる人影 鮮やかな金色の髪に闇に沈む仮面 首を囲む華やかな飾り 「ア、アルケイン将軍っ。」 こんな派手な格好で戦場に出る人を僕は将軍以外にしらない 「おや?こんな所にどうしたんだい?」 「陣営に戻れなかったので仲間と野宿しています。」 慌てて帽子を取り、片膝をついて頭を下げる 「あぁ、楽にしていいよ。誰もみていないからね。そうか、じゃあ君は今見張りをしているんだね?」 「はい。」 「よし、じゃあここにしよう。」 訳の分からない独り言を呟くとアルケイン将軍は近くの木の根本に腰を下ろす 僕は頭を下げたまま味方に『心配ない』とだけ報告をした 「一人で飲むのもいいんだけどね、今日は話をしたい気分だったんだ。」 膝を着いたままの僕に口許が笑いかける 「それでこんな外れまで?」 「まぁ、星を見ながら歩くってのもいいものだよ。」 やはり口許だけ、ニッと笑ってアルケイン将軍は 片手に持っていたワインボトルのコルクを丁寧に抜く 「グラスを持ってきたかったんだけど、割れてしまうからね。」 そう言ってからボトルにそのまま口をつけ分かりにくいが嬉しそうに笑った 「やはりいいワインだ。さっき手に入れたばかりだけどね。」 自慢するようにボトルの消えかけたラベルを見せてくれる 僕の見間違いでなければ銘柄は「七天八闘」 千年伯爵程ではないが高級ワインだったはずだ それをアルケイン将軍は水でも飲むように飲んでいる
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