呪歌と泡恋

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周りのヤツらが一斉に刀や銃を引き抜いておいらに狙いを定めてきた… それに構わず呪歌を使おうとした次の瞬間、 「…――んっ!!」 おいらが歌い始めるより先に誰かが背後に周り口を塞いできた。 俊敏な身のこなし… 押さえる手の温かさ… 間違いない、 松兄ぃが能力を発動させたんだ。 おいらと同じく松兄ぃも超能力者だったりする。使える能力は"瞬間移動(テレポート)"。 一瞬のスキを突いて、おいらを捕らえられるヤツなんて松兄ぃぐらいしかいない。 おいらより仕事経験が豊富で強い… だからおいらは松兄ぃだけに心を許してる。 それから、この組織で超能力を使えんのは2人だけだし、雇われるまでの境遇もまるで同じ… おれ達は能力者というだけで組織に良いように扱われる。 そこに人間としての価値なんて何一つない。 なんたって、人を殺すためだけに生かされた殺人マシーンの[核]なんだから… それは松兄ぃだって同じハズなのに…コイツらのことは大キライなくせにっ 「ッん、んー、んーっ」 「そこまでだ、落ち着けって…」 宥めるようにおれを後ろから抱き込んで、周りに武器を収めさせる。 口を塞ぐ手のせいでだんだん息苦しくなって、降参の意味で力無くその逞しい腕を叩いた おいらに殺意がないことを確認すると、ゆっくりと手が離れていく… 「っぷはッ、 …げほっ、げほ……っ…」 「今日は一段と威勢がいいな。その若さ、俺にも分けて欲しいもんだ」 おれが苦しそうに咳き込んでいるのを旦那は心底楽しそうな目で見つめてる。 「っすいません、俺の指導が行き届いてないばっかりに……」 松兄ぃが深々と頭を下げる。 だからなんで?なんで、松兄ぃが謝んだよ… 「本来だったら、キツいお仕置きレベルだぜ?こんな仕打ちされりゃーよー。」 「今度の依頼までにはきちんと調教しときますからっ、どうか碧蒼を許してやって下さい」 松兄ぃが必死で頭を下げてんのを見て、おいらは何も言えず黙ってた…… .
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