呪歌と泡恋

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覆い被さった松兄ぃがそろそろと布団をずらすと、おいらの肌に湿っぽい空気が纏わりつく 「……ったく、 真っ裸で寝やがって。」 「あちぃーんだもん。」 呆れ顔で言ってきたからそっぽを向いて言い返してやった。 そのツンケンした態度にフッと口元を緩め、おれを押さえていた手が頬をヤらしく撫でてくる 「理由になってねぇよ。それともアレか?そんなにヤられてーの?」 「いいよっ、 そっちのほーがまだマシ!」 嘲笑うように見下ろしてくるのを、キツく睨み返す 「ッハ、とんだ淫乱野郎だな。 働き先間違えてんじゃねーか?身売りの方が向いてんだろ」 「…なんだよ、結局任される仕事だってそんな変わんねーじゃんかっ。 おいらだってな、好きであんな仕事してんじゃねーんだよ!」 …淫乱野郎、 ………身売り、 いくら松兄ぃだからって、そんな言い方は許せない… おいらにだって一応プライドはある。 殺し屋としての。 おれは2歳で両親を殺された。 ここの旦那が率いる集団に。 とうちゃんも、かあちゃんも極悪非道なヤツだったんだってさ。 自分の親が悪者扱いされるのって、すげぇ侮辱的なことだと思う。 でも、おいらにしてみれば両親の記憶なんて無いから、この集団が親代わりなんだよ。 だからそんなの全然気になんなかった。サイテーだよね、とうちゃんとかあちゃんからしたら。 殺されたヤツらに子供育てられたんだもん。 正解を言えば、救われたんだけどね。おれも一緒に殺されるハズだったから。 でも、こうして生きてんのはヤツらに必要性がある存在として見込まれたってこと。 そもそも、おれ…能力者なの。 死神の声を持ってんだ。 "呪歌(ローレライ)"っていうんだけど…おいら、意識すれば歌で人が殺せちゃうんだよ。 .
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