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「今は実体が無いから炎の影響は少ないだろう」
「そうですか」
亮亜は安心したように微笑んだ。
──ただ今戻りました。2名ほど逃げ遅れております。
「わかった」
理緒は返事をすると、手を天に掲げて叫んだ。
『リニーネ!飢えた大地に天の恵みを!』
──楽勝よ!
これまた頭に直接響く幼い少女の声。
そして腕輪から光が放たれ、雷と共に雨雲がわく。
そして激しく降りだした。
「よし。案内してくれ、ユナ」
──わかりました。
「琅と亮亜は、ここに残って詳しい状況を把握!臨機応変に対応してくれ」
「「はいっ」」
同時に二人が答えるのを聞くと、駆け出した。
──少し先に数名、人間がいます。
「はいよ」
理緒は高く飛び上がり彼らの頭上を越えた。
音を立てずに着地する。
──そのまま進んで下さい。30歩ほどで入り口。その後40歩ほどで左、20歩で右です。そこが一番安全かつ近道です。
「そうか。助かるよ」
──いえ。これくらいのことは、当たり前です。それより、口元を覆って下さい!
「わかっている」
理緒はまだおさまっていない炎で覆われた扉を蹴破りながら答えた。
相変わらず、煙で鼻が利かない。
ユナのおかげで随分と助かった。
言われた通りに進む。
「ここか?」
燃え盛る炎に辟易しながら理緒は尋ねた。
──はい。
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