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銀狐の伝説
──銀狐、それは天狐と呼ばれる強大な力を持った一族の王の称号である。天狐族とは、三つの尾を持つ巨大な狐で、彼らは千夜狐山と呼ばれる険しい山を縄張りとしており、めったに人前には姿を現さないと言われる。
〈ウィラオの書より〉
パタン。
彼は分厚い書を閉じた。
窓からは黄昏時を示す太陽の光が、薄暗い室内を照らしている。
簡素な部屋には古い書物が壁一面にあり、貴重な物が多い故に、掃除が行き届いておらず、埃が厚く積もっている。
「やはり、銀狐については詳しく載っていないか」
小さく呟く。
わからない、という思いがわいた。
彼らは巨大な力を持ちながら、一切人間に干渉しない。しかも千夜狐山は、この国をぐるりと囲んでいる。
いつ何時でも攻められるのだ。
その時、コンコンと扉を叩く音がした。
「王子、国王陛下がお呼びです」
聞き慣れた老執事の声だ。
「そうか、今行く」
彼は立ち上がり、服についた埃を払うとその場を後にした。
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