始まりは炎の狼煙

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「ザルタの使者に伝えてくれよ」 理緒は嬉しそうに微笑んだ。 理緒の兄、琅[ラウ]を呼び、事情を話すと彼は笑って、 「面白そうだ。お供しますよ。いつ出発します?」 と言った。 「そうだな。暗くなったら人里に下りてザルタに入り、城を目指す。その間は、絶対に見つからないようにかつ迅速に移動する」 「「分かりました」」 琅と亮亜が同時に答える。そして二人共人間の姿に化けた。 琅はすらりと長身な優男風で、癖の強い銀の髪に一房黒い髪が混じっており、そのまま風になびかせている。 立っているだけで人目を引きそうな美男子だ。 亮亜は華奢で小柄な体つきで赤毛の少し癖のある髪を肩にたらし、銀の髪が一房混じっていて、つり目がちな面差しは気の強そうな印象を与えるが、笑うと花のように可憐な美少女だ。 「よし。後は、日が暮れるのを待つだけだな。それまでに、いろいろ準備しなくてはね」 理緒はそう言って微笑んだ。 赤く輝く太陽が、千夜狐山の向こう側に沈んだ頃。 次第に暗闇が辺りを包み始めた中、音もなく山の麓にある小さな里を風の如
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