渡廊下の章

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"鬼が現れたら、全力で逃げること。もし捕まってしまったら───"  咲智はその先を言わなかった。  単に知らなかっただけなのか、勿体振ったのかはわからなかった。  が、現実鬼は現れた。  核心はわからないが、確信はあった。  あれが、鬼なのだと。  どれだけ走っただろうか。  真っ暗な教室。  太陽はとうに沈んでしまった。  校舎を照らす明かりはない。  恐る恐る足を止める。  全身の神経を集中させる。  背筋を伝う汗が嫌に冷たい。  俺自身から発せられる粗い息遣いだけが、緊張した全身に響いただけだった。 .
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