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灯りを点けるわけにもいかず、かといって暗闇で過ごすような状況でもなく、懐中電灯は床に置かれ足元だけを照らす役目となった。 今や威勢の良かった男も、淫魔の登場に喜んでいた京でさえも、ハクの剣幕に圧されて黙り込んでしまっている。 そんな中でハクは机に向かい、悠々と教師への報告書を書いていた。 報告書と言っても消灯点検の報告をするものであり、まだ電気がついていた部屋や騒がしかった部屋の番号と、そこに居た者の出席番号と名前を記入するだけだ。 それにルームメートの名前を書き込んだハクは、顔を上げて二人を見守る。 因みにこの報告書、一度名前を書かれてしまえば翌日の放課後教師にこっぴどく叱られてしまうという、生徒にとって非常に恐怖する紙でもある。 「…つまり淫魔さんは、俺が会いたがってたから来てくれたんですね」 「そういうことになりますね…というか淫魔さんって呼び方やめてくれませんか、マジで…」 「ああ、すいません…」 静かにするよう注意したのはハクの方なのだが、こうもあからさまな態度を取られると更に機嫌は斜めに傾く。 「あの…じゃあお名前はなんと仰るんでしょうか…?」       カケル 「あ、はい…架流といいま」 「お前らうるっせぇ!!!!!」 突如響く怒号にしんみりと語り合う二人は停止する。 今や誰がどう見ても、うるさいのはハクの方だ。 しかし事実を口にすれば恐らく拳が頭に飛んでくるわけで、それを悟った二人は同時に黙り込んだ。 自己紹介すらままならない彼……架流は、背中に携えた翼で露出した上半身を匿うように身を縮め完全に怯えきっていた。 毎日叱られている京でさえ表情暗くしているくらいなのだから、これは仕方がない。
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