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──ニャー。
猫の鳴き声に閉ざしていた瞼を持ち上げてみれば、シミ一つ無い真っ白な壁が視界いっぱいに広がっていた。
左にはフワリと舞う、これまた白いカーテン。
ここは何処だろうか。
その場に手をついて身を起こしてから、今更ながらに自分がベッドに横たわっていたのだと気付いた。
シーツはシルクのように滑らかな肌触りをしている。
やけに良い環境であるこの部屋がとても居心地がいいのは何故だろう。
見慣れている気がするのは何故だろう。
そんな思案も掻き消されるようにして、窓から入ってくる風を浴びてもう一眠りでもしようとした時だった。
もう一度、あの鳴き声が聞こえた。
──ニャァ。
* * *
「ぎゃあ゙ぁああぁああ゙あ!!!!!」
サエズ
朝の清々しい小鳥たちの囀りとは不釣り合いに響いたのは、とある男子高生の叫び声。
と、それの後に続く『ゴツッ』という鈍い音。
「ちょっと京…朝からなんなの…俺に喧嘩売ってんの?」
叫び声の主、京と呼ばれたその人物の頭上から高めのテノールが降ってくる。
どうやら京が起き上がった瞬間、丁度顔を覗き込んでいたその彼に頭突きをお見舞いしてしまったらしい。
そしてその彼とは京のルームメイトの『ハク』という人物である。
同じ国の者とは思えないほど生れ付き色素が薄いその髪は完全なる白髪。それをアシメヘアーにしているのが印象的な彼は、この部屋の、もといこの寮の寮長だ。
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