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図書室。階こそは一緒であるが3年教室から真逆、一番遠い位置にある。
約5分ほどかけてそこにたどり着いたハクは、朝の図書点検時に既に開放されていたドアを慎重に開いた。
付近には他学年の教室があるため、授業時間の今現在騒がしくしたとなると教師らに見付かってしまう。
勿論その時の言い訳など考えついているのだが、無駄な手間はかけたくない。
兎に角、自分がこんなことをしなくてはならないのはルームメイトのせいなのだ。
彼のアホ面を思い返しながらハクはため息を吐き出す。
──馬鹿故に自覚が足りないのは仕方ないこと。
だから背中を蹴って気付かせなければならない。
不本意に表情を歪ませながらもそう自分に言い聞かせ、やがて何とか探しにきた本も手にいれた。
後はその場を後にするだけなのだが、普通本は無断で持ち出してはいけない。
では何故図書室をこんな時刻から開放しているのかと言われると、授業で使う古語辞典やら英和辞典やらを忘れた生徒が借りにこれるようにという配慮である。
一度寮に取りに戻るより、校舎内で借りた方が早い。
そして貸し出しに関して。
本の裏表紙には代々の図書委員手作りの収納ポケットつきで、貸し出しカードがしまわれている。
そのカードに名前を記入し、図書委員または委員担当教師に印を押してもらい漸く貸し出しとなるのだが…。
勿論、ハクにそんな面倒な手間を行う労力というか行動力は持ち合わされていない。
なにより職員室に立ち寄るのが一番の難儀。
しかしそれを怠ると点検時に本が足りないのがバレてしまう。
さてどうするか…。
ハクの懸念はそう長く続かず、すぐに貸し出しカードを本から取り出したのだった。
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