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時は進んで……夕方。 「なぁハク、酷い話だよな!!」 「俺が何したって言うんだよ!」 「ったく腹立つ!」 淡々と吐き出されていく言葉。 念のために言っておくが、これは全て京の独り言だ。 話によると時間は今日の昼休みまで遡ることとなる。 *  *  * 昼食を終え教室へ戻ってきた京を一番に出迎えてくれたのは、隣のクラスの生徒であった。 何度か生徒総会の際に見かけてはいた彼は恐らく図書委員長だ。 サイズの合わない大きめの眼鏡を何度もクイッと上げながらやたらと眼光鋭く己を見上げてくる彼に、京は少々たじろぐ。 図書室等入学してこの方全くと言っていい程近寄ったことがない。 勿論委員長とも面識は無い訳だ。 なのにわざわざ自分を待ち伏せていたのだから、警戒せざるを得ない。 そして長い沈黙の後、委員長は言った。 「毎回毎回見逃してあげてたけどいい加減言わせてもらうよ」 「図書室の本を勝手に持って行かれると困るんだ」 「貸し出し印の存在くらい知ってるよね?」 もう一度言わせて貰うが、京が図書室に近づくことは滅多に無い。 それから放課後までの間、身に覚えの無いことで説教された京の機嫌は暫く直らなかった。 *  *  * その怒りを今になって爆発させているのだが…ハクといえば部屋を入ってすぐ右に置かれた勉強机と向かい合い、課題に取り組んでいる。 ルームメイトの相手をしている暇は無い。 だが延々と愚痴を聞かされていてはいい気分になれるはずもなく、ハクの気も元から長くはない訳で…。 “ゴツッ”といい音を立ててぶつかるはハク愛用の消しゴム『消える君』。 「あだぁっ!!!」 赤く染まるは京の額。 容赦無いその痛みに京はベッドの上で右往左往ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロとのた打ち回る。 「勉強の邪魔すんな。……あとこれ京じゃないと返せないから戻しておいてね」 ルームメイトの口を封じることに成功したハクは清々しいくらいの笑みを浮かべ、分厚い本を一冊床の上に放った。
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