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「あ、あの、次は、私じゃダメですか?」
「やだ~ん! あたしって言ったくせに!」
…いつもの事ながら、けたたましい。
教室の扉を開くなり、視界に入る女の子の集団に、諦めにも似た溜め息が出た。
その中心には、今回も『注目株』に選ばれた【恋愛小説】が爽やかな笑顔を振り撒いている。
泣き出しそうな一人の【ファンタジー系挿絵】を見つけると、気障にポケットからレースのハンカチを取り出し、目元を拭いてあげながら、とても悲しそうに言うのだ。
「僕も、君がいないと寂しいよ。だけど、ごめんね。今回は少し元気な女の子が主人公で…君の繊細さを殺してしまうんだ」
そっと頭を撫でて。
「僕は君の繊細さを大事にしたい」
途端に【ファンタジー系挿絵】は顔を真っ赤にして、頭を前後に振るのだ。
その姿を横目で見ながら、俺は自分の席に着いた。
俺は【青春小説】。
泣きそうな顔をしていた【ファンタジー系挿絵】に、昨日告ってフラれた地味眼鏡。
『俺の人生に華を添えて下さい!』
決死の告白だったのに。
『私の世界とあなたの世界は違い過ぎるわ』
玉砕。
そりゃさ、青春日常茶飯事的展開ばっかりですよ。
のんびりまったり、注目株には到底入れない地道更新。
それでも、ちゃんと『好きです』って言ってくれる特定の読者もいるのに。
挿絵に囲まれた【恋愛小説】を見れば。
挿絵受けする波瀾万丈の展開、キラキラ光る美形キャラの連続出演。
確かに、世界が違うよなー。
鬱な気分で机に伏せた。
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