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「ち、父上…母上…?」
炎上する屋敷と混乱した人の波のなかで藍(アイ)はふらふらと両親を探して彷徨う。
「退け!邪魔だ!」
放水車を引いた火消しが忙しく走り回って泣きながら歩いていた藍を突き飛ばした。
「ぁっ…うぅ…」
砂利の地面に転がり、柔らかな両の手のひらには小石が食い込んで血を滲ませる。
火の勢いは収まらず広く大きな西洋風の屋敷が赤々と空を染める。
藍は我が家が一つの光の塊のように光り続けるのをただ見つめていた。
血の滲む小さな手を握り締めながら―。
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