食べられた花嫁

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薄暗い部屋に咀嚼(そしゃく)音が響く 「美味いなぁ、本当に。お、い、し、い、よ。あの材料がこんな料理に生まれ変わるなんて奇跡だ。」 一人で黙々と料理を平らげる主人。新妻はそれをどこか悲しげな笑顔で見つめている。 「前の妻と別れて正解だったよ。あいつは煮ても焼いても喰えない奴だった。でも君は違う、とても美味しそうだよ。」 肉をあらかた片づけた主人は新妻を見詰めながら目を光らせる。 恐ろしい、食人鬼のような目だ。 「そうだ、君も食べなよ。」 妻は無言だ。 「どうした?食べさせて欲しいのか?」 主人は玉ねぎやピーマンを妻に無理やり食べさせる。泣いているような妻の顔。 「食べられただろ。二人で食べる食事は一人とは違う。それが愛し合う二人ならなおさらだ。」 新妻は野菜が嫌い。だが愛する夫が食べさせてくれるならその嫌いな気持ちも薄れる。 野菜が『食、べ、ら、れ、た、花、嫁』 完 ナンバー001
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