散々な日

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外にでて陽の強さに目をしかめる。6月の曇り空といえど映画館の中よりは断然明るい。 『愛』とか『恋』とかよく言うけど意味を問うと誰も具体的に答えられない。 ……ほんわり?あったか? コンビニ弁当じゃあるまいし……。 滑った?知るか、そんなの。 ――仮に、辞書のごとく答えた奴がいたとしても 『あい【愛】 大切に思う、温かい感情。人をしたう心。異性をしたう心。』 ……はいそうですか。あったか派ですか。 だとしたら、『愛』が一生続くのは不可能だ。少なくとも、俺は。年中、そんな気持ちでいられるかっての。 電子レンジは電気代食うんだよ。 ――所詮、愛なんて画像や、文字の中にしか実在しない。 画像や文字は自分の思うままに出来るからな。 だが、物好きも居たもんだ。虚像を作るためにわざわざ、自分の人生を削るんだからな。 ふと、笑いがこみ上げてくる。 ……今、俺は嫌な顔をしているだろうな。 「……あのー。これ落としましたけど」
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