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「移動教室か。それじゃ、準備しなくちゃね」
私は机の中から必要な教科書を取り出して立ち上がると、彼女に先じて教室の出口へ向かった。
“背中を見てはいけない”という理由もあるが、せっかく声をかけてくれた彼女を置き去りにするような行動は、彼女の笑顔にときめいた自分をごまかす為でもあった。
「あ、待ってよまどか」
彼女は小走りで私に追い着こうとする。クラスメイトは既に全員移動先へ行ったらしく、教室には私と彼女の他に生徒がいなかった。
私は、本当に友達を置き去りにするつもりはない。出口まで来た所で振り返って彼女を待つ。
「ほら、みいな。早くしないと授業に遅れちゃうよ?」
「そんな事言って……私が声をかけなかったら、まどかは何時まででも考え事してたんじゃない?」
図星だった。
多分予鈴が鳴って初めて気づき、慌てて動き出しただろう。
声をかけてくれた事に対するお礼の意味を含めて「だから私は、みいなの事が好きなのよ」と答えた。
彼女は微かに頬を紅潮させて俯く。それを見た私は、自分で言った台詞に恥ずかしさを覚えた。
……別に、特別な意味を込めたつもりはないのだけど。
もしかしたら彼女には、私の台詞がアブノーマルな交友関係をほのめかす言葉に聞こえたのかも知れない。
「みいな、忘れ物は無い?」
「忘れ物……? あ、待ってまどか!」
――彼女が、突然振り返った。
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