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「でも、今の私には手鏡なんて必要ないわね…」
ミシェルがそう呟いた時でした。
右手に握った手鏡が突然、眩く光り始め、優しい輝きがミシェルを温かく包み込んだのです。
「こ…これは?」
ミシェルが呆気に取られた次の瞬間…
『私は鏡に宿る ロゼッタの精霊… お前が清き心を持っているなら 願いをひとつ 叶えてあげましょう…』
どこからともなく聞こえてくる優しい声…
「…鏡の中?」
一瞬、ミシェルは自分の耳を疑い、夢でも見ているのではないかと頬をつねってみましたが夢ではないようです。
「…本当に 願いを叶えて頂けるの?」
『私は鏡に宿る ロゼッタの精霊… さぁ何でもひとつ願いを 言いなさい…』
その言葉にミシェルは藁をも掴む思いで言いました。
「…お姉様が大切にしているティアラが見つからないのです!このままでは今晩のパーティーに間に合いそうもありません!ティアラのありかを教えては頂けないでしょうか!?」
その言葉に鏡の精霊はこう応えました。
『…ミシェル。お前は本当に心優しき女性ですね。
しかし、その願いは お前の本当の願いではないことぐらい 私にはわかります…。
そして、私の力を持ってせずとも その願いは叶いますよ。
さぁ、リラのもとにお行きなさい。
お前の 本当の願いを私が叶えてあげましょう。』
そう告げると鏡は元の手鏡に戻ってしまいました。
「…私の本当の願い?」
鏡の精霊からの言葉の意味もわからず暫く呆然としていたミシェルでしたが、言われたとおり、姉・リラの所に戻ることにしました。
──リラの部屋
「…お姉様、遅くなって申し訳ありません」
言いつけられたティアラを持たずに戻ってきたことをまた咎められるのではないかと、申し訳なさそうにリラの部屋を訪れたミシェル…。
「……ミシェル!今まで何をしていたの!?早く出発の支度をなさい!!時間がないわよ!!」
ミシェルの顔を見るなり血相を変えて怒鳴りつけるリラ。
「…え?出発って…」
予想だにしなかった姉の言葉に思わず聞き返すミシェル。
「お父様から今夜のパーティーには二人揃って出席するように言われたのよ!」
「…………!!」
思いもよらぬ姉の言葉に一瞬戸惑ったミシェルでしたが、次の瞬間には大喜びで自分の部屋にかけ出していました。
「鏡の精霊様のお陰だわ!ありがとう!」
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