10人が本棚に入れています
本棚に追加
―同時刻―
―幻想郷のどこか―
彼女はずっと空を見上げていた。
…雲一つない空だ。
満天に輝く星が、空一面に広がっていた。
…とある山脈の岩山の頂上。
そこに彼女は居た。
夜だというのに、紫の日傘を回しながらずっと空を見つめている。
「…『迷いの竹林』ね…。あそこはなかなか抜け出せないわよ。」
…独り言のようだ。
「…ふふ、せいぜい頑張って欲しいわね。『戦狼』さん。」
そういうと、彼女は視線を夜空から下ろした。
視線の先には、自然界の中では明らかに異様な光景…いや、幻想郷の中でも異質な光景だ。
コンクリートで固められた建物。
鉄の柵で覆われた敷地
建物の上には、傘をひっくり返したようなパラボラアンテナが我が物顔でそびえ立っていた。
…軍事基地だ。
女性は、目を細めてじっとその建物を見つめる。
…ふと、彼女の視界の隅で何かが光った。
彼女は、興味なさげに光った方向に視線を向ける。
…何かを見つけたのだろうか。
笑うように目を細め、扇で口元を隠す。
「…愚かね。」
前触れもなしに、銃声が轟いた。
それと同時に、彼女は消えた。
標的を失った弾丸は、明後日の方向に飛んでいく。
最初のコメントを投稿しよう!