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「…クリーンヒット。」
誠一は、犯人がいる木の上を見つめる。
その時、屋敷の中から爆音が聞こえた。
ふと、その音に気を取られた瞬間、木の上から誰かが飛び出した。
「あ、おい。」
誠一が声をかける暇もなく、悪戯の犯人は逃げていった。
…少女のようだったが…。
「…まぁいっか。」
そういうと、誠一は振り返った。
「ルーミア、大丈夫か?」
「…まだ痛いのだー。」
いまだ涙目のルーミア。
「頭にたらいは色々な意味で痛いよなー。」
誠一が頭を撫でてあげると、ルーミアは気持ちよさそうに目を閉じる。
「…ルーミア?どうしたんだ?」
突然、背後から声をかけられた。
振り返ると、銀髪の女の子がこちらを見ていた。
その少女を見て、ルーミアが目を輝かす。
「もこー。またやられたのだー。」
「また『てゐ』の仕業か?永鈴(えいりん)に見てもらいなよ。」
『もこー』と呼ばれた少女は近づいてくると、ふと誠一に視線を向けた。
「あんたは?里の人間には見えないが…血まみれなのはどうした?」
「…ちょっと面倒事にな。」
誠一は肩をすくめると、右手を差し出した。
「俺は秋山誠一。君は?」
「あ、…あぁ、あたしは藤原妹紅(フジワラノモコウ)。妹紅って呼んでくれ。」
差し出された右手に一瞬躊躇したようだが、素直に握り替えしてくれた。
…まぁ血まみれだしな。
「妹紅か。よろしくな?ここの住人か?」
「…いや、私もちょっと野暮用でな。」
妹紅はニコリと笑うと、しげしげと誠一を見つめた。
「あんた…外来人?」
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